九十九文の借りと沼に消えた兄弟
どんな伝承か
赤崎町にエンバヤシと呼ばれる所がある。昔ここには大きな沼があり、付近の一軒の農家に夫婦と二人の子が貧しく暮らしていた。子供は二人とも足が立たなかったが、夫婦は自分たちが食べなくても子にひもじい思いはさせなかった。ところが子供たちの足は成長とともに治っており、親が働きに出ると立ち上がって家中を暴れ回り、用意された食物をたいらげては、親の帰る頃にまた足の立たぬふりをしていた。ある日引き返した母親に見つかると、二人は走り出し、近くの沼まで来て、この沼に九十九文の借りがあると叫びながら抱き合って飛び込んだ。親は一文足して百文を沼に投げ入れ、冥福を祈ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大船渡市史 第4巻(民俗編)――伝説(大船渡市(編)・大船渡市史)
『大船渡市史 第4巻(民俗編)――伝説』は、大船渡市が編んだ市史の民俗編である。この写しには、第六章「俚諺・俗信」の軽口・地口の類と、天候予知や吉凶の前兆、禁忌、呪法などの俗信、第七章「伝説・昔話」のうち伝説の節を収める。伝説は木・石、山、坂・洞穴・塚、水部、長者旧家、社寺・堂閣、地名などに分けて、五葉山や日頃市・末崎など市内各地の言い伝えを並べる。