鹿を独り占めした家を囲んだ山犬
どんな伝承か
新野に伝わる山犬の話。ある人が山へ薪を取りに行くと、何かに食い殺された鹿が転がっていた。喜んでその鹿をそっくり持ち帰ったところ、夜になって山犬が何頭も家のまわりを駆けまわり、吠えたてて家の者たちをおびやかしたという。それゆえ、山へ入って何か恵みにあずかったときには、たとえ少しでも必ずその場に残しておかなければならないといわれている。話者は大正六年生まれの熊谷直美である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新野民俗誌稿――長野県下伊那郡阿南町(口頭伝承)(湯田朝子(第十五章「口頭伝承」))
『新野民俗誌稿――長野県下伊那郡阿南町(口頭伝承)』は、阿南町新野の民俗誌稿のうち、湯田朝子がまとめた第十五章「口頭伝承」の報告である。昭和五十三年一月に新野の古老五人から採話した昔話・伝説・ことわざ・なぞを収め、昔話には日本昔話名彙・日本昔話集成の話型を注し、伝説は信仰的・歴史的・文芸的の三つに分けて話者の名と生年を添える。昔話の語り始めと語り納めの形式や語りの場の変化も記し、ことわざとなぞで結ぶ。