出雲大社へ来る龍宮の使いの海蛇
どんな伝承か
海に途方もない大蛇がいるという話は日本ではあまり聞かないが、外国にはたいへん多く、十九世紀まで語り継がれ信じられてきた。日本で知られるのは、出雲大社へ毎年龍宮の使いとしてやって来るという海蛇で、著者はこれを背黒海蛇だろうとみる。海蛇は印度洋や太平洋におよそ五十種いるが、日本の近海にはそのうち四種ほどしかおらず、大きなものでも三、四尺に過ぎない。近ごろ出雲神話のワニを海蛇と説く人もいるが、何尋もあるような海蛇はもちろん存在しないと著者は述べている。
原典より
出雲の大社へ毎年龍宮の使で來るさいふ海蛇は背黒海蛇だらう。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。