浜の茶屋で戒名を読む大念仏
どんな伝承か
鳥羽の菅島には、その年に死者を出した家々が集まる大念仏が伝わる。旧暦七月十三日の朝、浜辺に二間に一間半のチャンチャヤという茶屋を建て、新亡の家から持ち寄った灯籠を吊るす。十五日までの三晩、僧と老婆たちがここで念仏を唱えた。最年長の新亡の家の者が茶屋の外に立って戒名を読み上げる名ノリの役を務め、ほかの家の者はその周りを輪になって回る。名が読み上げられるたび、居合わせた村人が砂スクモや塩の俵を、その家の戸主めがけて投げつけたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。