利根川堤の一本木から降る砂
どんな伝承か
柳田が十四歳のころ、利根川の岸の町に住んでいたとき、四十ばかりの女から聞いた話である。月の明るい夏の宵、土手伝いに帰ってきた人が、小さな獣が土手を越えて水際へ走り、浅瀬を歩いてから砂地の上を転げ回り、引き返して堤のそばのこんもりした一本木に登るのを見た。猫ではないと気づいて用心しながらその木の下を通ると、案の定たくさんの砂が降ってきたが、仕掛けを見ていたので声を立てるほどには驚かなかったという。土地の者はこれを狸だと信じていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。