室戸の崎で明星を迎えた求聞持法
どんな伝承か
超人的な記憶力を授けるという呪術に、虚空蔵菩薩求聞持法がある。弘法大師は『三教指帰』で、阿波の一沙門にこの法を授けられ、阿国の大滝の岳に登り、土州室戸の崎で勤念したところ、明星が来影したと記す。定められた方法で真言を百万遍唱えれば一切の教法を暗記できるという。道場は東南西の三方が開けた所に構え、東の壁に窓を設けて明星の光を迎え、月輪形の板に虚空蔵菩薩を描いて安置する。塩や茸・海草を断ち黄衣を着て明星を礼拝し、五十日か百日の苦行を日蝕・月蝕の日に成就するとされた。
原典より
焉(ここ)に大聖の誠言(せいげん)を信じて飛燄を鑽燧(えんさんすい)に望み、阿国大滝(あこくおおたき)の岳に躋(のぼ)り攀(よ)ぢ、土州室戸(むろと)の崎に勤念(ざんねん)す。—— 呪術と占いの日本史(渋谷申博・瓜生中・呪術・占い史・1992年(平成4年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
呪術と占いの日本史(渋谷申博・瓜生中・呪術・占い史・1992年(平成4年))
『呪術と占いの日本史』は、渋谷申博・瓜生中が平成四年に著した日本呪術史の概説書である。縄文の屈葬や土偶、卑弥呼の鬼道から中世の呪詛、近世のおかげ参りと「ええじゃないか」を経て、明治の神仏分離と修験・祈禱の禁止までを、記紀や史書の記事と民俗の断片から拾い上げる。古代・中世二章・近世の四章を小項目に分けて立て、表の歴史に現れない民間信仰を「闇」の系譜としてたどる。