戸倉山に登った下女と蝮
どんな伝承か
築沢の七大尽の一人坂野新九郎は、作男や下女の数が減るのを嫌い、盆も正月も休ませなかった。里帰りを許さぬわけにもいかず、戸倉山へ一俵の米を背負い一本歯の足駄で登れば正月の里帰りを許すと申し渡した。挑んだ若者は皆途中であきらめたが、下女のおとみは荒縄と一本歯の足駄をもらい、米俵を背負って一歩ずつ登った。流れる汗はあぶら汗に変わり、頂上を目の前に体がくずれて米俵が転げ落ち、破れた俵から出た米粒は一粒ずつ蝮に変わった。おとみは白蛇に変身し、小杉沢の天狗岩に住みついたという。戸倉山には今も蝮が多く、杉沢の弁天はおとみを祀った宮だと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
米沢市史 民俗編――伝説(米沢市(編)・米沢市史)
『米沢市史 民俗編――伝説』は、米沢市が編んだ市史の民俗編から、第八章「口承文芸」第三節「伝説」を収めたものである。狐・河童・蛇にまつわる話、上杉家の家臣や弘法大師・源義経にちなむ話、沢・池・岩の由来、地蔵や不動尊の霊験、温泉の開湯譚、長者屋敷など、米沢とその周辺に伝わる伝説を一話ずつ短くまとめて載せる。全体を「鳥獣・草木」「人霊」「山・川・湖沼」「地蔵・社寺」「温泉・町・村」の五項に分け、遠山と田沢の七不思議も列挙する。