川妻村の名主藤沼家に伝わる朱漆の木椀
どんな伝承か
葛飾郡の川妻村(いまの茨城県猿島郡五霞町)で名主を務めた藤沼太郎兵衛の家には、朱の漆を塗った木の椀が家の宝として受け継がれていた。安政年間に刊行された『利根川図志』はこの椀を取り上げ、寸法から形までこまかな図にして載せている。山の木地屋がこしらえた椀を霊験のある不思議な椀として語る話は各地にあり、この家宝もそうした霊験の話の確かな証拠の一つと見られている。木地屋たちが自分たちの椀を世に知らせるため、こうした話を広めたのではないかとも推し量られている。
原典より
朱漆の木椀が家宝として伝えられていることが書いてあって、その寸法、形にいたるまで、こまかく図解してある。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、暮らしの奥に秘められた信仰や伝承を扱った全集『日本人物語』の一巻である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使いと犬神落とし、生霊、隠れキリシタンや隠し念仏などを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。