平家姓を名のる落折の落人部落
どんな伝承か
鳥取からローカル線で一時間、さらにバスで山に入った所に落折という部落がある。鳥取・兵庫・岡山の三県の境に近く、杉林の中に千木を載せたかやぶき屋根が重なり合う。家はみな「平家」という姓を名のり、平清盛の弟の経盛が壇ノ浦の敗戦後、夫人と二十人ほどの家来を連れて中国山脈沿いに落ちのび、ここに住みついたと伝える。部落の名ももとは落人の隠れ家を表す「落居」と書いた。庄屋格の家の庭には苔むした経盛の墓と家来たちの墓があり、仏壇には弓の真ん中だけが残され、両端は鳥取の天徳寺と京都の東本願寺にあるという。四、五十年前までは他の部落と縁組みしなかったという。
原典より
この部落では、部落の家全部が「平家」という姓を名のっている。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。