顔が赤くなった地蔵と海に沈んだ高麗島
どんな伝承か
小値賀島から真西へ四里ほどの海上に美良島という無人島があり、その左手に平島という小島、そこから四里ほど離れて白瀬燈台がある。その燈台からさらに三里ほど西に、昔は島があったが今は海底に沈んだという高麗曽という浅瀬がつづく。ここがかつて人の住んでいた高麗島だという。昔、高麗島には霊験あらたかな石の地蔵菩薩がおわし、ある夜、信心深い人々の夢枕に立って、われの顔が赤くなったら大難の前兆と悟って逃れよと告げた。ところがこれをあざけり、たわむれに絵具で地蔵の顔を塗った者がいた。信じた人々は逃げたが、前兆はまさに当たり、島は一朝にして海に沈み、あざけって残った者はことごとく溺れ死んだ。
原典より
この菩薩が、ある夜、信心深い人々の夢枕に立って、われの顔が赤くなったならば、それは大難の前兆だとさとって、早々と逃れて命を全うせよ、というお告げであった。—— 日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本人物語5――秘められた世界(関敬吾(編)・日本人物語)
『日本人物語5――秘められた世界』は、日本人の暮らしの奥にある秘められた信仰や伝承を扱った叢書『日本人物語』の一冊である。境の神や通過儀礼を論じる序論に続き、入らず山や隠れ里、竜宮、平家谷、埋蔵金、生まれ代わり、あの世を見た話、魔法使い、生霊、秘密結社、狐憑きなどを、伝承と昭和三十年代までの新聞記事・見聞を織りまぜて述べる。序論「生活文化の秘密性――はじめに」の後、「奇蹟」「不気味な神々」などの区分の下に短い節を並べる。