小泉の者は化かさない盛隆寺のむじな
どんな伝承か
小泉町の盛隆寺の境内は、大正の初めに今の本堂が建つまで、欅や榎の大木が茂り墓のまわりに竹藪があって昼でも薄暗かった。そこにいつしか狸が住みつき、ときどき人を化かしたという。寺の裏の村の本通りを夜遅く通ると、生け垣を倒したり、にわかに大水を出したりして通る人を困らせた。この狸は雄で、人の言葉も少しわかったのか、小泉の者だぞと大声で名乗ると化かさない仁義を心得ていたという。そうして三十年ほど居ついていたが、明治十八年五月のある晩、麻畑で野犬三匹に襲われて命を落としたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説(鯖江市(編)・鯖江市史)
『鯖江市史 史料編 第1巻(民俗編)――伝説』は、福井県鯖江市の市史のうち、史料編第一巻の民俗編にあたる巻である。市内の各町に伝わる伝説を、町名を添えて収め、泰澄・親鸞・弁慶にまつわる木や岩、山姥やてんぐ、たたりのある一本杉、地名の由来を記す古文書の写しなどを載せる。自然物・岩石・動物・家屋敷・城跡・道・橋・寺院・塚墓・人物・事件の項に分け、後半には昔話・笑い話・果なし話と田植え唄などの民謡を置く。