田中ぼん(田中の墓の火の魂)
どんな伝承か
向かいの里である井田の人たちが言うには、田中の墓から火の魂が出るという。「田中ぼんな、あんなに出とるじゃ」と言って見ていると、ススス、ススス、フワーと、いっときのうちに野田さんの下の方まで来ることもある。ぼうっと浮いて、すぐ近くまで来ることもあり、逃げてきた人の話ではポッポッポッポと燃えている火だという。井田の人たちの話では、田中の墓から出てお経を読んでいるといい、何が燃える音か知らないが、ボトボトボトと、何か言っているようにも聞こえるという。大正の中頃に電燈がついてから見えなくなった。
原典より
向かい里の井田の人達のいうがに、田中の墓から出る火の魂の話や。—— 鹿島町史 通史・民俗編――伝説(鹿島町(編)・鹿島町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鹿島町史 通史・民俗編――伝説(鹿島町(編)・鹿島町史)
『鹿島町史 通史・民俗編――伝説』は、鹿島町の町史通史・民俗編のうち、昔話と伝説の節と、続く「俗信と俚諺」の冒頭を収めたものである。石動山麓と邑知地溝帯の集落で聞いた話を、芋掘り権兵衛や屁売りじいさなどの昔話、亀塚や椀貸穴などの自然伝説、初瀬の観音様や井田の不動滝の信仰伝説、久江の道閑や村境を決めた話の歴史伝説に分け、在所名を添えて載せる。伝承の状況や語り始めと結びを述べた解説を前に置く。