耳に隠して持ち帰った麦の種
どんな伝承か
日本にまだ麦の種がなかったころ、大師がインドへ渡って麦種をもらおうとした。ある家に麦種が干してあったが犬が番をしており、吠えられて主人に麦を盗んだと疑われる。大師は盗んでいないと言い、体のどこを調べてもよい、出れば好きにしてよいが、出なければ犬を殺せと約束した。調べても種は出ず、犬は殺されてしまった。じつは大師は麦種を一粒だけ耳の穴に隠していた。それが日本の麦のはじまりで、戌の日に麦をまくなというのはこのためだと伝える。
原典より
むかし、日本に麦の種がなかったとき、大師様がインドへ行って、なんとかして麦種をもらって来ようというので行った。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。