松と化した寒田郎子と安是嬢子
どんな伝承か
寒田の池の北の里に那珂の寒田郎子という美しい少年が、南の里に海上の安是嬢子という美しい少女が住んでいた。童子女松原で燿歌の会が開かれた日、二人は初めて顔を合わせる。舞う少女に少年が歌をかけ、少女も、人ごみの中から見つめてくれたからあなただと分かったと返した。踊りが終わると二人は人目を避けて松の下に隠れ、手を取り合って思いを語り明かした。雁の声も磯に散る波の音も耳に入らぬまま夜が明け、東の海から日が昇るころ、村人に見られるのを恥じた二人は松の木になってしまった。少年の松を奈美松、少女の松を古津松と呼び伝えるが、松原のあった場所には今は何も残っていない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。