昼の出産に吹く原風
どんな伝承か
加賀の能美郡の山あいに原という村があった。平家の全盛のころ、加賀に生まれた仏御前は都で清盛の寵愛を受けたが、世の無常を感じて故郷のこの村に隠れ住んだという。暮らしのため道端に小さな茶屋を出して酒肴を売ると、近郷の男たちが日ごと押しかけ、夜を日についで遊ぶ者まで出た。腹を立てた村の女房たちは相談のうえ茶屋へ押しかけ、仏御前をねじ伏せて殺してしまう。そのとき彼女は身重であった。以来、この村の女が昼のうちに産をすると必ず天候が変わって大風が起こるといい、これを原風と呼ぶ。それゆえ昼の出産では産室に屏風を立てまわし、夜のように暗くするのだという。
原典より
加賀国能美郡の山間に西尾という村があります。—— 日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第6巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第6巻』は、富山・石川・福井の北陸三県の伝説を集めた伝説集成の一巻である。神々の国争い、弘法大師や義経の遍歴、片目の魚、猿神や化物の退治など、伝承地を示した話を掲げ、県別の類話と古記録の文献記事を添える。巻末に福田晃の解説「主人公にたどる伝承世界」と、県ごとに近世の地誌から市町村史・民話集までを並べた使用資料一覧を置く。