桜淵の洞穴に棲む大蛇の正体
どんな伝承か
周智郡春野町の植田のはずれに深い淵があり、岩壁には大蛇が棲むという洞穴が口を開けている。この穴の底は小笠郡の桜ヶ池に通じているという言い伝えから、淵は桜淵と呼ばれてきた。野尻のある家に美しい娘がいて、毎夜若い男が通ってくる。母が厳重に戸締りをしても、男は音もなく現れ風のように帰る。娘に尋ねると、男の手足は冷たく、座った跡はしっとり湿っているという。母は正体を見届けようと、男の頭に針を刺して糸をつなぐよう娘に教える。娘がそのとおりにすると、男は生臭い匂いを残して激しい音とともに去った。翌朝糸をたぐると、桜淵に真紅の血に染まった大蛇が死んでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。