念仏の聖人を欺いた伊吹山の迎え
どんな伝承か
今は昔、美濃国の伊吹山に一人の聖人がいた。学問はなく、ただ阿弥陀の念仏を唱えるほかを知らず、名を三修禅師といった。長年怠らず唱えていたある夜、空から声がして、念仏の数が積もったので明日の未の刻に迎えに来る、決して念仏を怠るなと告げた。翌日、聖人は沐浴して香を焚き花を散らし、弟子とともに西に向かって念仏を唱えた。未の刻、西の峰の松の間から光が差し、金色の仏と菩薩の音楽、降る花が現れる。観音が紫金台を捧げると、聖人は這い寄って蓮花に乗り、仏は西へ去った。七、八日の後、下僧が薪を伐りに奥山へ入ると、谷の高い杉の梢に裸で縛られた師がいた。解き下ろされた聖人は正気を失い、二、三日で死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。