沼の主を討った老婆と蓮の花
どんな伝承か
庵原郡滝戸村の長者の家では、主人に続いて妻の小菊まで嬰児を残して死に、後には小菊の母と孫の小葭が残された。老婆は孫の成長を楽しみにしていたが、小葭が十七のとき病に臥す。小葭は看病のかたわら静岡の浅間神社へお百度を踏み、その甲斐あって病は快くなっていった。ところがある日、川合の渡へ来たところで沼の主が現れ、小葭は水底へ引き込まれてしまう。嘆いた老婆は、沼の主を退治して村の守り神になろうと決意し、自ら沼へ身を投げた。翌年から麻機沼一面に蓮が咲き、飢饉の折に村を救ったという。村人は老婆の霊を諏訪神社に祀り、沼の婆さんと呼んで七年ごとに祭を営む。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。