大蛇となって河伯を討った老母
どんな伝承か
麻機村東村の石橋彦左衛門の老母が残暑あたりで床に就き、孫娘の小葭は平癒を祈って駿府の浅間社へ参詣しようと川合の渡しへ急いだ。渡船中、風もないのに川浪が起こって舟が覆り、小葭は川中深く吸い込まれた。小葭は新田義貞の弟脇屋義助の妾小菊の遺児で、横死は観応二年七月と伝える。悲嘆した老婆は夜更けに川中に入り、生きながら大蛇となって仇の河伯を退治した。翌年、池に法器草という霊草が生じ、凶年の食を支えた。一周忌の大施餓鬼では池水が渦巻き、老婆の霊が池の水神になったと告げたという。後に大正寺の石叟禅師が老女に菩薩戒を授け、村民は池の汀の小山の宮居を諏訪大明神と崇め祭って今日に及ぶ。『駿府の伝説』に載る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。