赤芝新田の沼の主
どんな伝承か
赤芝新田がまだ沼地であったころ、一帯を支配していた伊奈氏に仕える「八田」の一人、藤田某はこの沼で釣り糸を垂れるのを唯一の楽しみとしていた。ある夜、水面に小さな蛇が現れて釣り糸のウキに戯れ、やがて糸から竿を伝って藤田の親指をなめはじめた。薄気味悪くなった男が小刀で切り捨てると、蛇は水中に沈んで消えた。翌朝沼へ行ってみると水は赤く染まり、死んだ大蛇が浮かんでいた。引きあげて切り刻むと馬三頭分の荷となり、その馬を引いて登った坂を「竜三駄坂」といい、のちに「十三段坂」と呼ぶようになった。後日、藤田の屋敷裏の竹藪から出た大蛇の頭蓋骨を貰い受けて祀ったのが安行領家の弁財天であると伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
川口市史 民俗編――伝説(川口市(編)・川口市史・自治体史(民俗))
『川口市史 民俗編』第4章所収の伝説。埼玉県川口市に伝わる自然・神社・地蔵・観音・薬師の伝説と命名由来を採録する。