勢多橋の大蛇と竜宮の鐘
どんな伝承か
『太平記』が記す竜宮の鐘の由来。承平のころ、俵藤太秀郷がひとり勢多の橋を渡ると、二十丈もの大蛇が橋上に横たわっていた。秀郷は少しも動じず、その背を踏み越えて行き過ぎる。すると小男が現れ、橋の下に二千余年住むが年来の敵に亡ぼされそうだと訴え、助力を乞うた。秀郷は承知して湖水を分け、竜宮城に招かれる。夜半、比良の高峰の方から松明を二列に連ねた島のようなものが近づいた。百足の化けたものと見た秀郷は矢を放つが二本まで弾かれ、三本目の鏃に唾を吐きかけて眉間を射抜き、これを倒した。竜神は太刀や鎧、尽きぬ俵、赤銅の釣鐘を贈り、鐘は三井寺に納められたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。