沼島に流れ着いた姫と女郎という魚
どんな伝承か
沼島のおかん坂の下に、おさがという賢い女の子がいた。冬のしけた日、鳴門の沖から流れてきた伝馬船が水の浦に着き、中に美しい女が気を失って倒れていた。漁師たちが介抱して息を吹き返させ、話を聞くと、土佐へ流された夫に会おうと尼崎から乗った船が海賊船で、鳴門の渦に阻まれた末に小舟で放されたのだという。島の者は都への船を出せぬかわりに大登にかくまい、女は娘たちに手習いを教え、娘たちは慰めに踊った。それが盆踊りの始まりだという。迎えの船が来ても海が荒れたので、女は醜い顔を描いた紙を海へ流し、それが沼島女郎という魚になった。船のみよしに歯黒を塗ってやると大漁が続き、沼島の墨みよしと呼ばれたと伝える。
原典より
むかしむかし、沼島のおかん坂という坂があるが、その坂の下におさがという賢しい女の子があってのう。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。