舟に取りすがるナナカマスの亡霊
どんな伝承か
竹野町奥須井に四国から遊びに来ていた姫が、村の若者のいたずらで不運にも命を落とした。その場所が海の地名でナナカマスというところであった。その後、そこを通る船に取りすがり、「伊予や讃岐の者なれど、今は住む住むナナカマス」と哀れな声で歌う亡霊が現れるようになった。昭和四十六年に九十八歳で亡くなった浜須井の平兵衛が若い頃、隣の重左と漁に出てナナカマスまで帰って来ると、例の亡霊が舟に取りすがって歌った。必死に漕いで家に帰り大戸を締めると、追って来た亡霊が入口の大戸をガリガリと爪を立ててかいた。その爪跡は長く語り草となり、平兵衛は高熱を出してしばらく寝込んだという。
原典より
〈柳田―「姫崎」〉竹野町奥須井に四国から遊びに来ていた姫が、村の若者のいたずらで不運にも命を落した。—— 日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。