機織り姿のまま嫁いだ娘
どんな伝承か
一刈り八町という広い田を持つ百姓に、娘が二人いた。日照りで水が絶え、困り果てていると、侍の姿をした立派な男が現れ、水を入れてやるかわりに娘を一人よこせという。娘のどちらかが行くと答え、田を見に行くと、その家の田にだけ水が張られていた。娘は、自分の姿を見ないでほしいと言い置き、機を織っていたそのままの格好で侍について行った。川に布の跡が残るのはそのためだという。盆礼に招かれた親元の者が酒樽を運ぶと、池に渦が立って樽は沈んだ。何年かのち、里帰りした娘は寝姿を見るなと断ったが、八畳間をのぞくと、渦を巻く娘と子らで部屋は埋まっていた。娘はひどく悲しんだ。以来、盆ごとに夜叉ヶ池へ樽を運ぶ家があるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。