烏の奇瑞と厳島社の造営
どんな伝承か
推古天皇の御代、内舎人の佐伯鞍職が恩賀島の沖で漁をしていると、西の海から紅い帆の船が近づいてきた。船中には瓶が据えられ、赤い幣を立てた傍らに三人の貴女がいて、宝殿と百八十間の回廊を造り、我を厳島大明神として敬えと告げた。鞍職が証を求めると、都の丑寅の空に異様な光の星が現れ、人々が騒ぐころ多くの烏が榊の枝をくわえて集まるだろうと答えた。果たして難波の都では無数の烏が榊をくわえて鳴き騒いだので、鞍職はこれを大明神の奇瑞として天皇に奏上し、俸田や修理料を賜って社の造営にあたったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。