一対の鏡が導いた姫と藤掛の地名
どんな伝承か
厳島神社の祭神である伊都岐姫が永住の地を求めて旅する途中、安芸の戸柿すなわち今の藤掛に着き、蔵元という家に一夜の宿を取った。その家の者が以前に見つけたという珍しい鏡を見せると、姫の持つ鏡と対をなすような見事な品で、姫はこれを神の導きと受け取り、この地に住もうと心を決める。ところが蔵元は、向かいに見える島は形がよく人も住まず山水も清らかで、姫が住まうにはいっそうふさわしいと勧めた。姫はすぐ船で渡り、島を一巡してその美しさを喜び、社を建てて永く鎮まった。戸柿の地名はのちに藤掛と書かれ、ふじがき、ふじかけと呼ばれるようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。