笛の音に見つかったささらが姫
どんな伝承か
府中町の呉娑々宇山の中腹にある雨池は、昔はささらが池と呼ばれたという。府中の田所氏が西へ落ちてゆく平家の一門をかくまい、月の明るい夜にひそかにこの地を通した。六十余人の一行のうち十八、九の姫が足弱で遅れ、池に身を投げようとしていたところを里正某が助けて家に連れ帰った。姫は素性を明かさぬまま、望んで池のほとりに庵を結び仏道に励む。のちに平家を破って陸路を引き上げる源氏の一隊が通りかかったとき、月に向かって吹く笛の音から庵を見つけられ、姫は池に身を投げた。新中納言知盛の姪ささらが姫と知れ、里正は祠を建てて霊を祀ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。