蟬の声で住み着いた平家落人と樫の門松
どんな伝承か
木頭の蟬谷にも、平家の落人が村を開いたという言い伝えがある。祖先にあたる平氏の一族が剣山の方角から逃れてきて、この谷まで来たとき蟬の鳴く声を耳にした。蟬が鳴くほどの土地なら人も住めるだろうと考え、そのまま腰を据えたのが村の始まりで、地名もそこから起こったのだという。蟬谷では正月に松ではなく樫の木で門松を立てる習わしがあるが、これも年の暮れに落ちのびてきたため松を用意する間がなく、ありあわせの樫で代えたことによると語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪
『阿波木頭民俗誌――伝説・妖怪』は、阿波の木頭地方の民俗誌のうち、「八、伝説・妖怪」の節と、阿波の太布を論じた一篇を収めたものである。前半は北川・折宇・蟬谷などの平家落人の話、平家の皿泉、カマ(滝壺)の大蛇、山爺やアセゴノマン、フルソマ、怪火、狐、隣の槙山村の塚の伝説を、『郡誌』の記事と古老の話から述べる。後半は太布に関する文献を挙げ、祖谷と木頭での聞き書きと製品の調査から原料・製法・道具を記す。