灰のわらじと千本横路の由来
どんな伝承か
昔、六十になったら山へ捨てねばならぬという時分に、息子とふたり暮らしの老婆がいた。息子は捨てたくないが、お達しだからと母を背負って山へ入った。母は行きがけに木の葉を取っては落とし、捨てられる自分より帰る子の道を案じて道しるべを作っていた。息子はどうしても捨てる気になれず、母を背負って戻り、隠して養った。あるとき殿様が、灰のわらじを作った者に褒美をやると言い出した。母に教えられ、わらじを塩水につけて焼いて差し出すと、殿様は望みのものを言えという。息子は褒美はいらぬ、母は自分の代わりに助けてくれと願った。殿様はひどく感激し、以後六十おとしを止めさせたという。野土路川ぞいの千本横路が、この六十落としの場所で、年寄りがついてきた杖が千本も溜まった。それで千本横路というのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第10巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第10巻』は、全国の伝説を型ごとに分けて集めた叢書の一巻である。岡山・広島・山口の三県を伝承地とし、蘇民将来、吉備津彦と温羅、厚狭の寝太郎、化け猫、河童駒引き、夜泣き石、姥棄て山などの伝説を、聞き書きや市町村誌、民話集から採って収める。「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」の部に分けて番号順に並べ、各話には伝承地と本文のあとに〔類話〕と近世の地誌などを引く〔文献〕を添える。