飴を買う女と十王峠に湧いた清水
どんな伝承か
蕪島に一軒の飴屋があった。夜更けになると若い女が一文を握って飴を買いに来る。それが六晩続き、七日目の晩には銭が尽きたので恵んでほしいと言った。不審に思った飴屋が跡をつけると、女は十王峠の方へ向かい、峠下の墓場で真新しい塔婆の陰に消えた。かすかに赤子の泣き声がする。飴屋は寺の和尚と女の家に知らせ、墓を掘って赤子を引き取り、手厚く弔った。のちに女が枕元に立って礼をしたいと言うので、良い水がなくて困っていると答えると、峠に櫛を置くからそこを掘れと告げた。翌朝そのとおりにすると清水が湧き、今も村の水源になっている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。