海から現れた網代寺の千手観音
どんな伝承か
鳥取県岩美郡岩美町網代の網代寺は古海山と号し、本尊は一尺余りの千手観音で閻浮檀金の像だと伝える。大同元年三月十八日、漁翁が網を携えて小舟で沖へ出ると、にわかに波が荒れて舟が震えたが、ほどなく静まった。海上を望むと岩の上に仏の尊像が現れていたので、舟を寄せて拝み、家へ持ち帰った。その島を観音島と呼ぶ。村人は驚き敬って仮の草堂を建て安置した。のちに一人の僧が精舎を建てようと隠岐へ渡って材木を用意し、古海山観音の用材と書き付けて流したところ、一本も失わず網代の浜に着いたので伽藍が成った。大永の頃に本尊が盗まれ但馬瀬戸村の鍛冶屋へ渡ったが、夢の告げによってこの地へ戻されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。