蜘蛛の糸で塞がれた塞ぎ渕
どんな伝承か
江津市の波積町南川に、塞ぎ渕という深い渕がある。渕の上で炭を焼いていた爺さんが休んでいると、一匹の蜘蛛が来て膝に止まり、糸を出して渕へ下りてはまた戻ってくる。何度も繰り返すので、爺さんは膝に張られた糸をそばの切り株に巻きつけておいた。すると蜘蛛は渕からすさまじい力で糸を引き、切り株が動き出した。炭俵を渕へ投げ込むと、小さかった蜘蛛は大蜘蛛に化けて襲いかかった。逃げ帰って知らせると人々が鋸や鎌を持って駆けつけたが、渕の水面は蜘蛛の糸で覆われて見えなかった。それでこの渕を塞ぎ渕と呼ぶ。数日後、宿を借りに来た女が米を炊いて握飯を作り出て行ったので、爺さんは蜘蛛が子に運んだのだろうと思ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。