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樅の井戸の淵で足に糸を掛けた水蜘蛛

所在地千葉県いすみ市大野樅の井戸
年代伝承(口承)
登場七都、体験者・語り手の座頭
出典耳嚢(みみぶくろ)

どんな伝承か

七都という座頭の話である。七都は上総国夷隅郡大野村の生まれで、二十四歳で目が見えなくなったが、二十二、三歳のころ、村を流れる幅十間ほどの川に、樅の井戸と呼ばれるたいそう深い淵があった。対岸は竹藪が茂って昼でも薄暗く、もの寂しい所だった。よく魚が釣れると聞いて糸を垂れていると、水中から蜘蛛が出てきて足の指に糸をかけては水に戻ることを何度も繰り返し、足首の大半に糸が巻きついた。七都はそっと糸をそばの杭に移して様子を見ていた。すると水の中で「よし、よし」と言う声がし、藪の中から「よし」と答えた途端、杭が半ばから折れたので、驚いて逃げ帰ったという。

原典より

右河内に字樅の井戸とて至て深き所あり。向ふは竹藪生茂り、昼も日陰くらくうそ淋しき場所なるが、…—— 耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年)) より引用
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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

耳嚢(みみぶくろ)(根岸鎮衛・江戸随筆・怪異・1809年(文化6年))

『耳嚢(みみぶくろ)』は、根岸鎮衛(守信)が勤めの合間に古老や訪ねて来た人から聞いた話を書き留め、佐渡在勤のころからまとめ直して文化六年仲秋に結びを付した随筆である。武家・町人の逸話や奇談に加え、狐・狸・幽霊・妖獣などの怪異、羽蟻や虫歯・ものもらいを治めるまじない、薬の秘法を、一項ずつ題を掲げて記す。この本文は著者の自叙と巻之一から巻之十まで(巻之四を欠く)の抜粋で、巻末に著者の結びと『耳嚢副言』の一部を置く。

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