ウンカ除けに打ち立てた虫除け札
どんな伝承か
天保十二年(一八四一)八月、上総国権木村(千葉県夷隅郡太東町)とその隣の和泉村の名主二人が、地頭所へ差し出した注進書がある。それによると、両村の田一面にウンカが取りついて稲を覆ったため、村の寺院で虫除けの祈禱を行い、田ごとに虫除けの札を打ち立てたという。房総の古い言葉を扱った海保四郎の本に引かれた記録である。強い農薬もヘリコプターによる散布もなかった時代には、病虫害を防ぐのに神仏の札に頼るほかなかったことを示し、いまも神札や呪術的なお札が捨てきれない背景の例として紹介されている。
原典より
ウンカ虫両村耕地一 (いったい)の稲草を取りまき………………村方寺院虫除(むしよけ)、祈禱仕(つかまつ)り、田毎(たごと)に虫除札(むしよけふだ)等を打立て…—— 現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。