人魚の肉をなめた娘と八百比丘尼塔
どんな伝承か
須崎市多ノ郷の大坊に伝わる。昔、押岡の渡しの近くに大坊千軒と呼ばれる栄えた浦があった。ある春の日、漁師の網に頭は人で体は魚という人魚がかかり、評判を聞いた人々が遠くから見物に来た。月日を経ても腐らず、人々は恐れなくなった。ある漁師の幼い娘が這って行き、網で傷ついた人魚の肉をなめてしまった。娘は成長して同じ浦の漁家に嫁ぎ、玄孫を抱く齢になっても少しも老いなかった。二百歳に近づく頃には身内もいなくなり、尼となって諸国を巡り若狭に数百年住んだ。八百歳の頃に故郷へ戻り、大阪から船で運んだ石塔を産土神の加茂神社に奉納した。これが加茂神社の八百比丘尼塔で、比丘尼は龍宮の近くの岩穴で余生を送ったという。
原典より
<柳田——「比丘尼谷」>今は昔、押岡の渡近傍に、「大坊千軒」と言って、繁栄の浦がありました。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。