大串の鼻の老婆が投げた長ぞわい
どんな伝承か
いつの頃か、白方の漁師が父子三人で夜の漁に出た。出るときは穏やかだったが、夜中から風が強まり舟が進まず、やっと大串の鼻に漕ぎつけた。岩陰で枯木を燃やしていると、山の下草を分けて、髪を振り乱した年の知れぬ老婆が近づいてきた。父は小声で、口をきけば食われるぞとささやく。老婆は火にあたらせろと三人の間に割り込み、やがて食べ物を持ってきてやると言って去った。その隙に三人は舟へ飛び乗り必死に漕ぎ出した。大串の先を離れたとき、岬の岩角に老婆が現れて返せ乗せろと叫び、みるみる鬼のような大きな姿になって岩をもぎ取っては舟へ投げつけた。舟は転覆せず三人は命拾いした。この石が、今も大串の鼻に立つ長ぞわいだという。
原典より
<高木―「岩の掛橋」柳田―「鬼石」>いつのころか、白方の漁師が父子三人で夜の漁に出かけた。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。