入って来る舟と伝えるゆずりはの舟石
どんな伝承か
香川県さぬき市前山のゆずりはでは、谷の縁に長さ四メートルほどの細長い石が横たわっている。その形が舟によく似ているため、土地の人は古くからこれを舟石と呼んできた。大昔、ここまで舟が押し寄せてきたのだと語り伝えられている。しかもこの石は内を向いているので、出て行く舟ではなく入って来る舟、すなわちイリフネの舟石なのだと説明される。舟の伝えと石の形とを結び合わせて語られてきた、ゆずりはの谷の奇石である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか)
『ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌』は、武田明・高橋克夫らが香川県長尾町の前山地区の暮らしを記した民俗誌である。祭りの項に続く「口承文芸」の項を昔話と伝説・世間話に分け、昔話は星越・大多和・譲りはの古老の語りを話者の名を添えて土地の言葉のまま書きとめる。伝説と世間話には中津・大多和・ゆずりはなどの天狗石や川女郎、首切れ馬、桂洞法印の化物寺の話を収め、項の末尾に執筆者の名を記す。