八朔に供える美々津の搗き入れ団子
どんな伝承か
神武天皇が船出したという八月朔日、美々津では早朝に起きよ起きよと声をかけながら戸を叩いて回る風習が残る。人々は天皇へ団子を献じようと支度していたが、急な出立に間に合わず、米の粉と小豆をこね合わせただけのものを差し上げた。これを搗き入れ団子と呼び、今も八朔に神前へ供える。港にある八重と黒瀬という二つの岩の間からは船を出さない習わしもあり、東征の舟師がそこから出たまま帰らなかったのを忌むためだという。天皇が出発前に遠見村で紙鳶を揚げて風向きを見たことにちなみ、この地では陰暦八月に秋紙鳶を掲げる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。