草履に糸を掛けた淵の主の蜘蛛
どんな伝承か
肥後の阿蘇山の南に開けた谷を白川が流れ、その南側の山から白川へ注ぐ渓流に、おとろしが淵と呼ばれる場所がある。蜘蛛がおびただしく棲みつき、釣りに入った者が竿も糸も巣に絡め取られて往生することが多かったため、淵の主は蜘蛛だと語られてきた。ある男が釣り糸を垂れていると、一匹の蜘蛛が幾度も足もとと対岸のあいだを泳ぎ渡り、やがて男の履いた草履から向こう岸の岩へ、小指ほどの太さの糸が一筋張られた。まもなく岩の上で凄まじい音が鳴り、草履だけが宙を舞って対岸へ引き寄せられたという。素足や草鞋であれば命を奪われていたと村の者に聞かされ、今もこの淵へ行く者は角結びの草履を履く。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第14巻』所収の「文化叙事伝説」「自然説明伝説」全75話(熊本・宮崎・鹿児島=南九州)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。