九月十四日に浮かぶ静女の朱盃
どんな伝承か
島津の殿様が関の尾の滝で仲秋の夜に月見の宴を催したところ、座の中で放屁した者があり、もっとも美しい腰元の静女に疑いがかけられた。翌朝、静女は酌に使った盃を袖に入れたまま滝壺へ身を投げた。以来、月見の行なわれた九月十四日の夜になると、定紋の入った朱塗りの盃が滝壺に浮かび上がるという。付近の石に刻まれた『書きおくも形見となれや筆の跡又逢う時のしるしなるらん』の歌は、静女の辞世だと伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。