茶碗を割った女中とけさが道
どんな伝承か
神宮司家に仕える女中のケサが、ある日、家の宝ともいうべき大事な茶碗を誤って割ってしまった。主人から厳しく叱られたケサは、その苦しみに耐えきれず、泣きながら屋敷を出て行った。帰るに帰れず途方に暮れたケサは、王子山の下の道を前目の方へ四、五十間ほど歩いたが、そのうちに死を決したのであろう、下の淵へ身を躍らせて若い命を絶ってしまった。ケサの霊を慰めるためか、誰言うともなく、彼女が苦しみもだえて歩いたその四、五十間ほどの道を、けさが道と呼ぶようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。