持尾の岡のかくれ世と飯焚き三蔵
どんな伝承か
財部郷の内にかつて正寿寺という寺があり、今は廃寺となっている。住持が老山和尚のころ、飯焚きの三蔵という者が、ある日馬草を刈りに持尾の岡へ向かった。途中、湧き出す忍穂井の東にあたる琴之瀬戸の口で白髪の翁に行き会う。翁はよい所へ連れて行こうと言って持尾の岡へ登り、頂には言葉に尽くしがたい美しい家があった。中には同じような翁がもう一人と、上席に天人がいた。翁二人は囲碁を打ち始め、三蔵は寒餅や菓子など珍しい馳走を受けた。家内や近隣の者が二、三日岡を捜し歩き、碁の場に何度も踏み込んだが見つけられなかった。声を掛けるなと翁に制されていたためである。やがて帰ると三日のつもりが三箇月が過ぎていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。