猪を追った日本武尊と甘酒こぼし
どんな伝承か
秩父郡荒川村の熊野神社の祭礼は甘酒こぼしと呼ばれ、七月二十五日に境内で行われる。昔、日本武尊が東夷を平定して甲斐から雁坂峠を越え、三峯山に立ち寄る途中、熊野神社の鎮座する猪鼻で一匹の猪に出くわした。尊が猪を追ううちに賊の隠れ家を見つけ、残党を討ち滅ぼすことができたので、喜んでこの地に大神を祀ったのが熊野神社の始まりという。里人が感謝のしるしに甘酒を捧げると尊は大いに喜び、酒造りを奨励した。後に疱瘡が流行した折、葛城連好久卿が三峯山とこの社に参拝し、以来、例祭では尊に甘酒を捧げ、疫病払いとして境内に甘酒の大樽を出し、輿を担ぐ人々が小桶で汲んでかけ合うようになったと伝わる。
原典より
秩父郡荒川村の熊野神社の祭礼は、甘酒こぼしと呼ばれており、七月二十五日に神社の境内でおこなわれている。—— 武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年))
『武蔵の伝説』は、大島建彦と渡辺千佳子が昭和五十一年に著した伝説集である。埼玉県・東京都と神奈川県の一部にあたる旧武蔵国の伝説を、地誌・紀行・社寺縁起・区市史や『埼玉県伝説集成』などの文献と土地の口碑から集め、項目ごとに出典を添える。『日本伝説名彙』の六部門に家・村と祭礼・行事を加えた八部に分け、巻頭の「はじめに」で伝説の分類の方法を論じている。