天狗が寝る内寒沢の二本松
どんな伝承か
比企郡小川町下里の字内寒沢、通称谷津に、二本の老松があった。どちらも上へは伸びず、枝が水平に張って空が見えないほど繁っていた。古老によれば、天狗がこの松の上で寝るために枝ぶりが平らになったのだという。山主である内寒沢の安藤家では、先祖代々、正月にこの松へ注連縄を張り、小正月には接骨木の花を捧げ、正月料理を三度三度供えてきた。しかし昭和四十一年の台風で一方の松がひどく傷み、伐採されて天狗松は一本だけになった。この地方の古老は天狗を山の神と崇め、隣村菅谷との境の観音山や塔の平、七曲りの山々を飛び回って山を守っているのだと語る。
原典より
天龍寺に天狗松という名の松があったことが『新記』にみえる。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。