窪みの水で子を授かる上古寺の子持杉
どんな伝承か
小川町上古寺の塚山にある小久保氏の裏山に、子持杉という珍しい杉があった。根元から一間ほどの所で五本の幹に分かれ、その分かれ目の窪みに溜まった水を飲むと子が授かるとされた。周囲六メートル余り、高さは二十メートルを超え、幹の分岐点には直径一・五メートルほどの平らな場所があって水が溜まっていたという。子宝に恵まれない婦人が薬のように毎日この水を飲むと霊験があるという噂が広まり、十里二十里の遠方から泊まりがけで訪れる夫婦もあった。老木となって枯れかけたため、昭和二十三年に伐採された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。