大蛇に引導を渡した清順の座禅石
どんな伝承か
熊谷市成田の龍淵寺には、開山の和庵清順が座禅したという石が伝わる。清順はこの地の景色を気に入って寺を建てようと思い、ある月夜に龍ヶ渕のほとりで座禅していると、突然の雷雨とともに数丈の大蛇が現れて襲いかかった。清順は引導を授けるから姿を変えて来いと一喝し、読経を続けた。すると空は晴れて名月が輝き、六寸ほどの白蛇が渕に浮かんで清順のもとへ泳ぎ寄り、衣を伝って手のひらに乗って輪を描いた。蛇を放して石の上で夜を明かすと、大沼は一部の池を残して平地に変わっていたため、清順は喜んでここに寺を建てたという。残った池が龍ヶ渕で、三尺四方ほどの座禅石は寺宝として珍蔵されている。
原典より
岩上は約三畳敷位(約六平方メートル)の広さ。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。