一隻が八隻に見えた八舟坂
どんな伝承か
坂上田村麻呂が東征したときのことという。将軍は久保の摩利支天から市原山にこもる賊を討とうとして高麗川を渡ろうとしたが、川は増水して渡れなかった。そこで一隻の舟を作って渡ったところ、朝日の光を受けて一隻の舟が八隻に見え、賊は恐れをなして、たちまち退治することができた。それ以来この坂を八舟坂と呼ぶ。このとき将軍に味方した者が田村の姓を授かり、その子孫が今も土地に住んでいるという。
原典より
坂上田村 将軍の東征の時だったという。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。