膳椀渕の主だった大蛇の頭骨
どんな伝承か
日高町新堀の霊岸寺の東に、昔は大きな渕があった。高麗川が渦を巻くすさまじい渕で大蛇が棲み、祝儀や不祝儀で人を集めるときにこの渕にお願いすると、十人前、二十人前の膳椀が必ず浮いていた。用が済めば村人は礼を言って膳や椀を返した。ところが欲深い者が借りた膳椀を返さなかったため、それからは幾度頼んでも出てこなくなった。やがて年月がたって渦巻く渕は河原に変わり、今は畑地になっている。ある大洪水のあと、河原で大蛇の頭骨が見つかり、人々は膳椀渕の主だといって、今も霊岸寺の宝物として金網の箱に納めている。『高麗郷土史』による。
原典より
霊岸寺の東に大きな渕があった。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。