太陽を射た行者と天道山のさかさ川
どんな伝承か
狭山市入間川の天道山にまつわる話である。昔、ある夏に太陽が二つ現れて日照りが続き、村人は困り果てた。森に住む行者に頼んで二十一日間祈祷してもらっても効き目がなく、行者はついに矢で一つの太陽を射た。すると黒雲とともに三本足の白い鳥が小高い岡に落ちてきて、天が逆さになったように思われたので岡を天倒山と呼ぶようになった。鳥の血が流れて川となったのがシルタレで、ほかの川と流れる向きが逆なのでサカサ川と名づけられた。この川は常に白く濁り、乳の出ない女が橋の上に豆腐を供えて祈ると効き目があったという。鳥の魔物を射たことから射魔、すなわち入間の地名が生まれたとも語られる。
原典より
昔、ある夏二つの太陽が出て、村人は旱天で非常に困りはてた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。