落雷の火事に降った雨と竜巻
どんな伝承か
足腰の神として知られる奥武蔵の子ノ権現は、昭和五十六年七月十九日の夕方、落雷で本堂が燃え上がった。開山の伝説では、子ノ聖が眠るあいだに悪鬼が周りの山に火を放ち、聖が天に祈ると天竜が現れて雨を降らせ火を消したが、聖は腰から下に火傷を負ったので足腰の神になったという。落雷の日は大相撲の千秋楽で、寺の人々はテレビを囲んでいた。火は一時間ほどで消えたが、燃えている間は車軸を流すような大雨が降り、鎮火と同時にぴたりと止んで星空がのぞいた。火事の最中には竜巻も起きたという。住職の櫛笥亮映師はこれを奇跡とは言わないが、やがて霊験談として語り継がれるだろうと著者は記す。
原典より
その一つは火の燃えているときは、車軸を流すような大雨が降り続いたが、火が消えると同時に不思議にも雨はピッタリと止み、雲が切れて星空が覗くようになったという。—— 秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行(神山弘・1984年(昭和59年))
『秩父・奥武蔵伝説たわむれ紀行』は、神山弘が一九八四年に著した伝説探訪の紀行である。越辺川の流域や高麗郷、富士山のある村々、竹寺、武甲山と三峰山、宝登山、釜伏峠と粥新田峠など埼玉県西部の山村を歩き、土地の古老からの聞き書きと『新編武蔵風土記稿』などの記録を交えて、竜や大蛇、天狗、幽霊、将門などの伝説を語る。土地ごとの章に小見出しを立てた随筆体で、著者の前著『ものがたり奥武蔵』で扱わなかった土地を主にとりあげる。